映像の中のジミ・ヘンドリックスは、いつもイラついている。 口元に皮肉っぽい笑みをうかべ、大きな瞳は妖しくギラギラと輝く。 デビューして間もないモンタレー、死を迎える直前のワイト島。 時と場所が変わっても、ジミの表情は変わらない。 そして、イライラが絶頂に達すると、ギターとFUCKしてしまう。 ジミは何に対して、そんなにイラついていたのだろうか? 女性関係? バンドの力量? マネージメント? いや、そうではない。 ジミは自分を取り巻く環境に対して、イライラしていたわけではない。 彼の刃は、自分自身に対して向けられていたのだ。 「オレの頭の中に棲んでいる悪魔を、追い出してくれ!」 ジミは泣きながら、ガールフレンドに訴えたという。 もちろん彼の頭の中に、悪魔など棲んではいない。 ジミの頭の中を支配していたのは、音楽の小宇宙。 そこには、混沌として実態のない宇宙が、限りなく広がっていた。 しかし、彼は、それを表現する術を知らなかった。 いや、もっと正確に言えば、頭の中に描いている音を100%表現できなかった。 ジミはそんな自身のふがいなさに対して、いつもイラついていたのだ。 「こんなもんじゃない!」 「オレが言いたいことは、こんなもんじゃないんだ!」 人々はジミ・ヘンドリックスを語る時に、賞賛と畏敬の言葉しか使わない。 しかし、ジミが表現したものは、彼の頭の中のほんの一部なのだ。 もしジミが、頭の中に描いている音を100%表現できたとしたら。 きっと、想像を絶するような音楽が現出していただろう。 しかし、それでもジミはイライラしたのではないだろうか? なぜなら、彼は今以上に、人々から理解されなかったはずだから。